バルダーズ・ゲート3先行プレイレビュー!TGA Game of the year受賞作品!
アルテマ攻略班
バルダーズ・ゲート3(Baldur's Gate3・BG3)の評価とレビューです。攻略班によるPS5版のネタバレ無し先行プレイレビューに加え、Steam版のユーザーレビュー等の評判も掲載しています。
バルダーズ・ゲート3の評価
総合評価 | ||
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9.5 / 10 点 | ||
ストーリー | 自由度 | グラフィック |
★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
戦略性 | 音楽 | UI |
★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
バルダーズ・ゲート3はどんなゲーム?
2023年8月にLarian StudiosからSteam版が発売されたバルダーズ・ゲート3。本作は、長らく日本語訳版が出ていなかったという事情もあり、日本では極一部のコアゲーマーのみプレイしているという状況だったが、12月21日に待望の日本語版がPS5で発売される。また、日本国内でも購入可能だったSteam版にも、日本語対応のアップデートがPS5版リリースと同時期に行われる予定だ。
今回、アルテマでは発売に先立って、PS5版をプレイする機会を得られたため、早速レポートをお届けする。
テーブルトークRPGを題材にしたコマンドRPG
バルダーズ・ゲート3は、「テーブルトークRPG(以下TRPG)」を題材にしたRPGだ。
TRPGの中でも特に有名な「ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)」の一部地域を舞台としており、世界観及び用語も基本的にD&D第5版に準拠している。
本作の最大の特徴は、会話や行動の結果の多くが「ダイス」で決まる点にあり、TRPGさながらに展開が様々に派生していく。
キャラビルド、選択と行動、ダイスによって、プレイヤー毎に戦闘とシナリオの両面で異なる体験ができ、プレイヤーの意思決定によって介入できる要素の多さが魅力のタイトルだ。
テーブルトークRPGとは
- ・紙、ペン、ダイスを使って行う会話形式のゲーム
- ・ビデオゲームにおけるRPGの源流となった文化
- ・D&Dが有名
テーブルトークRPG未経験でも楽しめるか?
結論から言うと、未経験者でもいくつかの専門用語さえ把握していれば楽しめると筆者は感じた。演出における洋ゲー特有の癖の強さはあるが、ゲームシステム自体は日本のゲーマーでも入っていける作りになっていた。
というのも、「キャラを育てる」「強い装備を求める」「敵と戦う」「広い世界を冒険する」といった、本作のゲームとしての基本は日本のゲーマーにとっても慣れ親しんだものだからだ。
TRPGは日本において特定の世代を除いて馴染みの薄い文化だが、FFやドラクエ、ソウルシリーズといった国産RPG自体が、D&D及びTRPGの影響を強く受けた作品なので、そもそも全くの異文化というわけでもないのである。
そういった意味では、バルダーズ・ゲート3はRPGとして極めてオーソドックスかつ原点的な作りであり、「本場の味」とも言えるだろう。
数字で構成された「ロールプレイング」
拡大する1~20のダイスの目で運命が決まる
本作は、数あるRPGの中でも特にプレイヤーの選択が大きな意味を持っている。物語の展開と人物の運命はプレイヤーの選択と「ダイス」によって大きく変わり、その派生パターンも多岐に渡る。
ダイスという一見するとアナログなシステムを支えているのが、お馴染みのRPG要素である「キャラビルド」だ。
本作のキャラクターが持つクラス、ステータス、スキルは、戦闘能力に留まらず、物語を決める選択肢とダイスにも作用する。
拡大する大体出てくる「攻撃する」の選択肢。なんとも物騒……。
例えば、ある人物との会話において、パラディンなら清廉な選択が可能になったり、盗みに長けていれば唆すような会話ができたり、筋力に自信があれば力での解決が可能になったりと、選択肢そのものが変化・追加される。
さらに、ダイスに対して各ステータスの数値が加算減算処理され、選択の成功率を上下させる仕組みだ。
戦闘とシナリオの両方がステータスとダイスという数字によって動くため、脳筋はより脳筋らしいゲームに、悪人はより悪人らしい展開に……といった具合、に「選択」と「数字」という要素が密接に関わり合いながらゲームが進行していく。
「ロールプレイングゲーム」という言葉が持つ本来の意味に対して非常に忠実かつ、数字に基づいたゲーム的な構成が、本作の大きな魅力となっている。
やり直しも容易にできる
本作はオートセーブのデータスロットが多めに用意されており、重要な決断の前にクイックセーブをすることもできる。
ダイスを有利にする手段が豊富と言えど、時に容赦なく失敗して望まない展開を迎えてしまう事も当然ある。そういった残酷さが本作の魅力ではあるが、どうしても納得がいかない場合はロードでのやり直しも容易な設計だ。
SRPGを踏襲したターン制のパーティ戦闘
本作の戦闘は、「FFタクティクス」や「オウガバトルシリーズ」のような、地形と環境を考慮しながらキャラを移動させて対象を攻撃!といった具合に進行する、SRPGによく似たシステムを採用している。
地形やスキルをしっかり把握して行動しないと、序盤からあっという間に全滅するほど、歯応えのある難易度だ。
バフ・デバフを駆使しつつ、身を隠して不意打ち、ドアを閉じて射線を切る、崖の上から突き落とす等、様々な戦略を求められ、思いついた事は大体実行できる懐の深さを持ったバトルを本作では楽しめる。
ダークなハイファンタジー
本作は、マジックザギャザリングや指輪物語、クトゥルフ神話のような、ダークなハイファンタジーの世界観を有している。
ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ノーム、オークといったファンタジーお馴染みの種族が存在しており、プレイヤーはそういった種族の中から自分のキャラクターを作るところからゲームは始まる。
ドギツい表現が山盛り
日本のPS5版では表現規制が一部かかるものの、ゴブリン同士の交尾現場に出くわす、NPCと恋愛関係になり一夜を共にする、といったセクシャルなシーンが度々出現する。
また、「生きた人間から剥き出しの脳みそを引きちぎる」といった、かなりハードなグロテスク表現も序盤から容赦なく登場するため、PS5版でも相応の覚悟を持ってプレイする事をおすすめする。
幅広いキャラビルド
プレイヤーは、ゲーム側で用意されたオリジンキャラクター達のいずれか、もしくは、カスタムで自由に作成したキャラクターを選択してゲームを開始する。
オリジンキャラクターはゲーム中に登場するパーティキャラの中から選ぶことになり、それぞれが固有のバックボーンとストーリーを持っている。ただし、カスタムキャラクターで始めてもオリジンキャラクターを仲間にできるため、多くのプレイヤーはカスタムを選んでいるようだ。
カスタムの場合、ノンバイナリーを含むアイデンティティ、体の性別、種族、クラス(職業)、バックボーンを選択し、プリセットを組み合わせてキャラの外見を作成する。初期ステータスと初期スキルが、種族・クラス・バックボーンのそれぞれに設定されており、例えばクラスで「パラディン」を選んでも、種族と出自次第で全く異なるビルドでゲームが始まる。種族以外はある程度ゲームを進めると変更できるため、まずはフィーリングで選んでキャラを作ってゲームを遊び、本作のセオリーを把握してから攻略用に吟味したビルドに変える事も可能だ。
探索とシナリオにもビルドが影響する
ビルドは戦闘以外にも影響する。例えばフィールド上のギミックに対して、低身長の種族なら岩の隙間を通れる、脳筋ビルドなら「とりあえずぶっ壊す」的な選択肢のダイスで成功しやすくなるといった具合だ。
ビルドによる選択の成功率と結果の違いはNPCとの会話やシナリオ上でも起こり、ビルド次第で異なる物語を体験できるシステムとなっている。
ビルドの幅がさらなるボリュームをもたらす
本作のシナリオクリアまでの時間は、75~100時間とされている。探索要素や各種イベントを網羅する事を含めると、200時間ほどになる。
これだけでも十分過ぎるボリュームだが、本作は様々なビルドで繰り返し遊びたくなる魅力も持っている。
効率的にプレイをすれば1周あたりのプレイ時間は大きく減ると思われるが、それでも人間1人の人生で遊び尽くせるかわからないほど、やり込みに終わりが無いゲームデザインとなっている。
記憶に残るタイプのBGM
海外のゲームおいて、BGMはあくまでも環境的な表現に留まったスタンスで制作される事が多いが、本作のサウンドは意外にも(?)しっかり前に出てくるタイプだ。
自然豊かなフィールドではわかりやすく美しい曲が流れ、物語の山場や戦闘シーンでは大いにサウンドから盛り上げてくれる。
しっかり記憶に残るBGMがいくつも登場するため、RPGにおいてサウンドも重視する傾向にある日本のゲーマーにとっては嬉しい作りだ。
クォータービュー視点は変更可能
日本のゲーマーの多くがとっつきにくさを感じるであろうクォータービュー視点だが、あくまでも「ゲームを有利に進めるためにカメラを目一杯引いた状態」がクォータービューになるというだけで、昨今のRPGでよく見る背後からの三人称視点でもプレイ可能だ。
ただし、左右方向にはカメラを自由に動かせる一方で、上下は見下ろし→クォータービュー→背後からの三人称という方式なので、多少の慣れは必要かもしれない。
気になった点
多くの点で非常に優れたタイトルではあるが、いくつか気になった点もあった。
表現規制について
PS5版では、裸体及び性器の表示、ゴア表現、ベッドシーン等が規制でオフにされてしまっている。
シナリオ自体に変化はないものの、クリエイターが表現として盛り込んでいたものを体験できないのは残念なところではある。
Steam版で日本語パッチをあてた場合にどうなるのかは本記事作成時点では不明だが、過激な表現を求めるのであればSteam版の購入も視野に入れたい。
操作性はSteam版に劣る
拡大するアクションとボーナスの色分けは嬉しい要素
本作のUIは、Steam版ではMMO等でよく見るタイプのパレットにスキルを並べてマウス&キーボードで操作していく方式だが、PS5版ではコントローラーに適応したショートカットで各種行動を選択する方式を採用している。
ゲーム進行において大きな妨げになる事はないが、やはりサッと行動できるマウス&キーボードに比べると、PS5版はどうしても一手間かかってしまうというのが正直なところ。操作・UIの利便性では、Steam版に軍配が上がるだろう。
英語音声のみ収録
本作は英語音声のみ収録されており、オプションで音声言語を変える事はできない。
イベントの会話シーンでは特に問題にならないが、探索中にパーティメンバー同士が会話を始めた時にフライテキストをカメラ範囲内に入れておかないと見逃しやすい点は、かなり気になった。探索中のパーティメンバーは頻繁にカメラ外に漏れてしまうため、会話が始まるたびに足を止めて会話を「読む」必要があり、ゲームのテンポを悪くしてしまっていると感じた。
全体的にコアゲーマー向け
本作のゲームシステムにおける用語は、D&D固有のものが少なくない。そして、チュートリアルでそれらの全てが仔細に解説されているわけではない。
各用語の意味するところはJRPGで用いられる概念に置き換えて理解可能ではあるものの、TRPG初心者は用語のいくつかをネットで調べるといった自助努力が多少は必要になる。
TRPG初心者やライトゲーマーを振り落とすほどではないが、プレイヤーが「考えて」「気付きを得て」「選択する」という過程を最大限尊重した設計になっているため、単なる暇つぶしではなく趣味としてしっかりゲームと向き合いたいコアゲーマー向けの作品だと感じた。
本作を楽しむ上で、国内外でのゲーム文化的な壁は確かにある。が、その壁はほんの数分のネットサーフィンで解消できる程度のものである事は強調しておきたい。
総評:極めて純度の高いクラシカルなRPG
日本人にとって馴染みのあるRPGと言えば、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、あるいはソウルシリーズ等が挙げられるだろう。
バルダーズ・ゲート3のゲームとしての設計は、そういった馴染み深いRPGの源流であるTRPGに基づいており、それだけに「RPG」に必要なものが高い純度で内包されている。
難易度の高い戦闘や用語の理解等、決してライトゲーマーに優しい作りではないが、高い熱量でゲームを遊ぶ人間には、バルダーズ・ゲート3はどこまでも真摯に応えてくれる。
斬新さやグラフィックという点ではなく、既知の要素をひたすら作り込んで磨き上げる事で勝負している、なんとも剛健なゲームだと筆者個人は感じた。
最後に、一つだけ警告しておきたい。
もしあなたが、タクティクスオウガを何周もするタイプのゲーマーであれば、安易にこのゲームに手を出すべきではないだろう。あなたはまるで寄生虫に取り憑かれたかのように、バルダーズ・ゲート3をプレイする事にその一生を捧げてしまうかも知れないからだ。
こんな人におすすめ
おすすめポイント
- ・ロールプレイが好き
- ・TRPGが好き
- ・D&Dが好き
- ・SRPGが好き
- ・キャラビルドを考えるのが好き
2023年度TGA Game of the year受賞
バルダーズ・ゲート3は、4大ゲーム賞の中でも特に注目度が高いThe Game Awardsにおいて、その年で最も優れたゲームに送られる賞である「Game of the year」を獲得している。
2023年度は、ティアーズオブザキングダム、スパイダーマン2、バイオハザード RE:4、スーパーマリオブラザーズ ワンダー、Alan Wake 2と言った錚々たる顔ぶれを抑えての受賞。候補外でもスターフィールド、ホグワーツレガシー、FF16、AC6といった話題作がリリースされており、稀に見る豊作年の頂点に立ったのが、バルダーズ・ゲート3なのである。