犬派が究極の猫ゲー『Stray』を遊んでみた
アルテマ攻略班
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黒板ごろー的評価
総合評価 | ||
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8.5 / 10 点 | ||
ストーリー | 謎解き | グラフィック |
★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
音楽 | ネコ度 | イヌ度 |
★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
猫×サイバーパンクのアクションアドベンチャー
猫好きにとっての必読書と言えば、ロバート・A・ハインラインによるSF小説「夏への扉」が挙げられるだろう。
『Stray』は、そのゲーム版とも言える猫好きに特化した作品だ。
プレイヤーは、ゲームクリアまでの5~7時間ひたすら猫を操作して、閉塞した鉄と錆とネオンの光に満ちたサイバーパンクな世界を冒険する。冒険の舞台では至る所に「猫」を表現するためのギミック……例えば絨毯、ソファ、高所に置かれたペンキ、パソコンのキーボード、ピアノ……が置かれており、それらに対して猫は猫好きの期待通りの行動をしてくれる、特濃の猫ゲーがStrayである。
しかし、そこには一つ問題がある。
それは「猫好き以外にとってもプレイに値するゲームなのか?」という事だ。
かく言う筆者は、圧倒的に「犬派」の人間である。
家に犬がいるのが当たり前の環境で育ち、2日に1回は動画サイトで犬動画を観ているし、犬種の知識も豊富であると自負しており、いつか広い庭付きの家を買ってボーダーコリーの多頭飼いをするというささやかな夢も持っている。
誤解のないように書いておくが、決して猫が嫌いというわけではない。好きか嫌いかで言えば好きではある。
ただ、猫に対する「好き」を10とするなら、犬に対する好きが200になるというだけの事だ。
そんなわけで、冒頭に挙げた「夏への扉」も1ページ目の「世の全ての猫好きにこの本を捧げる」の一文で「自分、犬派なんで……」と本を閉じてしまう体たらくである。
夕食の買い出しに行くと頻繁に出会う地域猫に対しても、互いに無関心で交流は一切無い。
それでも筆者がStrayを購入したのは、そもそもこういったナラティブ重視のいわゆる「雰囲気ゲー」が好きだからである。
「ICO」「LIMBO」といったシンプルなパズルアクション+上質な雰囲気で構成されたゲームジャンルの一つとしてプレイした場合、Strayはどう映るのかという観点から、当記事ではレビューをお届けしていく。
書いた人 | プロフィール |
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![]() |
デモンズソウルにハマりすぎて卒論を落とし留年 FF14にハマりすぎて就活をサボる ゲームで破滅してゲームで飯を食う人生 |
荒廃した世界で生きる猫の物語
ゲームを始めるとすぐに、プレイヤーは猫を操作することになる。
雷雨が轟く中で雨宿りをしている主人公の茶毛の猫(筆者が猫について不勉強なので品種は不明)は、仲間の猫にちょっかいを出すような愛嬌のある性格をしており、厳しい環境ながらもそれなりに楽しく生活している事が窺える。開始数分で、猫アレルギー持ちであれば涙とくしゃみが止まらなくなりそうな猫・猫・猫の攻勢だ。
しばらくすると雨は止み、猫一行はどこかへと向かっていくのだが、その途中で主人公の猫はシェルターの地下奥深くまで転がり落ちてしまい、仲間たちとはぐれる。
足を引き摺る痛々しい描写もあり、猫好きであれば涙が止まらなくなってしまうかもしれない。犬派の筆者ですら、このあたりの描写は辛いものがあった。
一晩ぐっすり眠って怪我が完治した主人公猫は(猫の生命力すごい)道なりに進んでいき、街らしき場所へ辿り着く……というのが冒頭の流れだ。
主人公猫は各地の仕掛けを解きながら、仲間たちとの合流を目指してシェルターを進んでいくことになる。
言語表現は多め
ゲーム開始直後はテキストがほぼなく、猫の挙動でゲームプレイの大枠を把握できる作りとなっていたが、旅のパートナーとなるAI搭載ポッドと出会ってからは、基本的にテキストベースで物語が表現されていく。
フィールドに点在する意味深なテキストは全てポッドが翻訳してくれて、街に住むロボット達ともポッドを通じて会話をしてゲームが進行する。
主人公猫は基本的に人語を深くは理解していないようだが、どう考えても人語を正確に理解していないとありえない行動がゲーム進行上で不可欠なため、このあたりは少し気になった。
SF設定が相応に細かく作られたシナリオなので仕方ないとはいえ、本作における言語表現の多さがこのゲームジャンル及びコンセプトに対して適切であったかどうかは、意見の割れるところかもしれない。
猫視点で考えるルート選び
本作では、猫を操作するという独自性から、ルート選択においても「猫になったつもりで」考える必要がある。
人間を操作できるゲームとは少し視点を変えて、ちょっとした柵の隙間、開いた窓、飛び移れそうな細いパイプ等、猫ならではの道を見定めていく過程が、程よく頭の体操になる作りだ。
物を落とす、鳴き声で驚かせる、キーボードの上を気ままに歩き回る……といった猫仕草が攻略の糸口になっている場面も多く、猫主人公である事の必要性はしっかり感じられた。
一部ホラー表現あり
本作では、猫を攻撃してくる小型の敵が頻繁に出現し、その敵が多い場所はホラー寄りのデザインがされている。
急に驚かせるようないわゆるジャンプスケア表現は無いため、極度にホラーが苦手というわけでなければプレイ可能ではあると思われる。
謎解きは程よい難易度
本作は、各所のギミックを解く、あるいはNPCとのイベントを進めることでゲームが進行していくオーソドックスなスタイルを採用している。
序盤に訪れる街では導線がやや弱く、総当たり的な探索になってしまうためやや遊びにくさを感じたが、そこを超えればサクサク進められるようになっていた。
謎解きの難易度も適度な難易度で、思考のドツボに陥らない限りは自力突破が可能なちょうど良いバランスだった。
総評
「猫」×「サイバーパンク」という世界観とビジュアルが本作の肝であり、ゲームシステムそのものはオーソドックスな謎解き型のアクションとなっている。
一部導線の弱さからしらみつぶし的な探索にならざるを得ない場面はあるが、総じて安定したクオリティを維持できており、価格も含めて手軽に楽しめるゲームに仕上がっている。
そのため、犬派でもゲームとして十分楽しむことができた。
ただ、猫生活シミュレーター的なゲームでは決してないため、もしあなたが重度の猫好きでそういったゲーム性を期待して購入を検討しているなら、その点は注意が必要だ。
まとめ
本作のプレイを通して「なるほど、猫も良いね……。」と考えを改めた筆者は、コンビニに行く際にいつも会う近所の地域猫に優しく手招きしてみた。が、彼または彼女は
シャー!!
と威嚇してから足早に走り去ってしまった。ぐっ……これだから猫は……!いや、この「つれなさ」こそ猫の魅力……。
もしかしたら、あの地域猫にも本作の主人公のような冒険があるのかもしれないし無いのかもしれない……。
この記事を書いた人
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