ダンガンロンパの精神的続編『終天教団』先行プレイレビュー
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終天教団の先行プレイレビューをお届けします。ゲームシステム、登場人物、シナリオの傾向等を掲載。
終焉を待つ世界で展開する謎解きアドベンチャー
タイトル | 終天教団 |
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ジャンル | マルチジャンルADV |
リリース日 | 2025年9月5日(金) |
プラットフォーム | Switch/PC(Steam/DMM GAME PLAYER) |
開発 | Tookyo Games/DMM GAMES |
『終天教団』は、DMM GAMESとダンガンロンパシリーズを手掛けた小高和剛氏率いるTookyo Gamesがタッグを組んで開発された、マルチジャンルADVです。ポップなビジュアルでの推理を軸にしたゲーム進行と刺激的な展開のシナリオが特徴で、ダンガンロンパの精神的続編とも言える立ち位置の作品。
ルート毎にゲームシステムが大きく変化し、1本のゲームでバリエーション豊かなゲーム体験ができることも大きな特徴です。
今回、先行プレイの機会を頂けたので、当記事ではエンディングまで見た上でのプレイレビューをお届けします。
なお、ネタバレには配慮していますが、各ルートの導入部分やシナリオの方向性について触れているため、前情報をなるべく入れたくない場合は注意してください。
こんな人におすすめ
- 容赦のないシナリオが好き
- キャラがバンバン死ぬ
- 緻密な伏線が張り巡らされたシナリオが好き
- 一見すると無関係な出来事同士が徐々に繋がって謎が明らかになっていくカタルシスがある
- バラエティ豊かなシステムで遊びたい
- ルート毎に全く異なるUI・ゲームシステムを採用
ダンガンロンパシリーズの特徴を数多く継承している作品ですが、あくまでも新規IPなのでダンロン未プレイでも全く問題なくプレイ&理解可能です。
終天教団先行プレイレビュー
エンディングを迎えるまでのプレイ時間は約45時間。アドベンチャーゲームとしてはなかなかの長丁場です。
自分を殺した犯人を探す異質なストーリー
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ボーイッシュな女主人公。よく男に間違われる上に女性から好かれがち。
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生前の主人公。明るく朗らかに世界の終焉を待ち侘びている
本作の主人公・下辺零(しもべ れい)は、世界の終焉を心待ちにするヤバめなカルト教団の教祖です。
もう一度言います。
主人公がカルト教団の教祖です。
何者かによって殺された主人公(しかもバラバラ殺人!)は、記憶を失いながらも神の力によって仮の肉体に転生し、天使の二人に導かれるまま「神の力」と呼ばれる超常的な能力を使いながら、自分を殺した犯人を探す「神の試練」に挑んでいきます。
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主人公をサポートする天使ヒメルと天使ミコトル
意のままに殺害すら可能な「神の力」
全員怪しく全員シロにも思える容疑者達
容疑者は教団幹部の5人。プレイヤー(主人公)は私立探偵として5人の容疑者それぞれと接触し、自分を殺した犯人を探す中で、教祖殺害事件とはまた別の様々な事件に巻き込まれていく……というのが本作のおおまかな流れです。
昭和×カルトの怪しい世界観
舞台となるのは、「終天教国」という怪しげな宗教が支配する国。
本作のフィールド及び背景は、昭和的な建築をベースとし、そこに「首なしの巨大な像」「終焉までのカウント」「教団を礼賛するビラや横断幕」といったオブジェクトが配置された、独特の怪しい雰囲気が漂っています。
一方でビビッドな彩色と現代的なキャラクターデザインが相俟って、古さを感じさせないビジュアルとなっているのはさすがのセンス。
ルートによって全く異なるゲームが開始
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5人の容疑者達
プロローグの中で、教祖殺害犯は教団幹部の5人に絞られます。プレイヤーはこの5人から誰か1人を犯人として選択し、各ルートが開始。
当然ながら、プロローグの中で得られる情報だけで誰が犯人なのかを正確に判断することはまず不可能なので、あてずっぽうです。
各ルートをクリアした後はルート選択の直前の部分まで戻って再選択が可能なため、最初は「このキャラの見た目が好き」「なんとなくこいつが怪しい」「このジャンルのゲームをやりたい」というザックリとした理由で選ぶことになります。
いずれのストーリーも本筋とは全く関係なさそうな導入と舞台で進行しますが、容疑者として選んだ各教団幹部個人を掘り下げると同時に、謎に包まれたメインシナリオの全体像が少しずつ明らかになっていくという構成です。
そのため、最初に選んだルートを攻略している最中は「一体何をやらされているんだ……?」という感想を抱いてしまったものの、ルートの終盤に差し掛かると、本筋との接点が見え始め、とにかく続きが気になって仕方がないという状態に。
各ルートのシナリオそれぞれに二転三転する展開が用意されており、ルート単体でも満足感を得られるクオリティでしたが、ルート攻略中に開示されていくメインシナリオの情報がさらに強烈なモチベーションを生み、筆者はクリアまで寝る間も惜しんで突き動かされることになりました。
失敗時のリトライが楽
本作では各ルートに失敗パターンがあり、「選択肢を間違える」「敵と接触してしまった」等でゲームオーバーになる頻度は少なくありません。
しかし、リトライできる地点が細かく設けられているため、あえて間違った選択をして失敗パターン見る場合でも気楽に道を踏み外せるユーザーフレンドリーな仕様です。
ちなみに、ゲームオーバー画面もルートによって異なるデザインが用意されています。
謎解きのカタルシスが各ルートにある
本作で用意された5つのルートではそれぞれ別個の事件が発生し、本筋である教祖バラバラ殺人事件は一旦置いて、そのご当地事件の解決が目下の目的となります。
それらの事件はいずれも「謎」が物語を牽引し、真相に辿り着いた時のカタルシスは一本のサスペンス、ミステリー並のものが用意されており、本筋を含めると6作品分の脳みそスッキリ体験ができます。「そういう事かぁ~~!!」で何度も気持ちよくなれます。
各ルートの紹介
それぞれのルートのクリア時間は、およそ5~7時間ほど。全てクリアする場合、30時間前後はかかります。しかし、読むスピードや書くジャンルの得意不得意で前後するので、人によってはもっと長い時間かかるかもしれません。
ルート毎にメインシナリオに関して重大かつ異なる情報(真犯人が誰かというのとは全く別)を得られる構造になっていますが、その重大さの度合いはルートによって差があります。
筆者の場合、犯人を言い当てる直前まで、犯人が誰かはわかっていませんでした。
犬神軋ルート(推理アドベンチャー)
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元探偵の経歴を持つ薬物中毒者。捉えどころのない言動が多い。
教祖の死体第一発見者でもある。
露骨に怪しい。
あらすじ
犬神軋を犯人と断定した零は、早速犬神との接触を図る。偶然にも犬神と出会えた零だが、犬神が抱える仕事……大富豪の遺産相続の立会人の助手として帯同することとなる。
莫大な遺産を巡る親族同士の殺し合いに巻き込まれた零は、名探偵(?)として事件に関わっていく。
オーソドックスな推理アドベンチャー
捜査パートの聞き込みと現場調査で情報を得ていく
情報を整理して推理を進める
犬神ルートでは、聞き込みや捜査でキーワードを集めて、推理で事件を解決していくというオーソドックスな推理アドベンチャーが展開されます。
推理を間違えられる回数に制限はあるものの、失敗してゲームオーバーになっても直前からリトライできるため、サクサク進みます。
シナリオの傾向
大富豪の遺産相続を巡る王道的な推理アドベンチャーが展開。標的の犬神の名前同様に、犬神家の一族をオマージュした舞台設定の物語となっています。
何かと犯人と決めつけられてしまうメイドの水野さんがひたすらかわいい。水野さんと恋愛アドベンチャーしたかった……!
大神の胡散臭い言動が良いアクセントになっていて、連続殺人という惨劇が舞台でもどこかコメディ色を感じられる作りとなっていました。
丑寅幽玄ルート(極限脱出アドベンチャー)
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豪放な性格の医師。
人望もあり、教祖への忠誠心も高い。
怪しくなさすぎて逆に怪しい。
あらすじ
丑寅幽玄を犯人と断定した零は、丑寅が管轄する保健省の病院を訪れる。丑寅に事情聴取をしている最中、謎の集団に襲撃を受けた零はデスゲームに強制参加させられてしまい……。
パズル主体の脱出アドベンチャー
謎の配信者がデスゲームを実況&進行
昔懐かしい一人称視点でダンジョン内を進み、パズルを解いて扉を開けていくというスタイルのルートです。
様々なデスゲームが展開されますが、デスゲーム自体はあくまでもシナリオのフックで、実際にプレイヤーの遊び部分となるのは主にパズル。
このパズルの難易度が思いのほか高く、終盤ではドツボにハマって2時間ほど考え込む場面も。ゲーム的な難易度で言えば、最も難しく感じたルートでした。
シナリオの傾向
デスゲームが舞台ということもあり、多くのキャラが登場し、多くのキャラが死にます。ある意味で、ダンロンスタッフのゲームに期待されることを真正面から描いてくれるルートと言えるでしょう。
また、「犯人が誰であるか」という事とは別に、物語全体の核心となる情報が開示されるルートでもあるため、最初に選択すると他のルートでの伏線描写に気づきやすくなります。そのため、最初の方にこのルートを選んだかどうかで物語全体に対する体験・感じ方が大きく変わる可能性があります。
他ルートの物語中での伏線描写を理解しながら進めたいなら最初、他ルートでの新鮮な驚きを欲するなら最後に回すのがオススメ。
伊音テコルート(マルチ視点ザッピングノベル)
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計測不能なほどのIQを持った天才児。
冷徹な人物で、目的のためならあらゆる犠牲を厭わない。
かなり怪しい。
あらすじ
伊音テコが管轄する研究所を訪れる零。テコとの面会の約束を取り付けたと思ったのも束の間、あっという間に罠にかかって捕まってしまう。
神の力で罠を解き、研究所の地下空間に潜入すると、零の眼前には巨大な人工のサバンナが広がっていた。
零の侵入と時を同じくして、異教徒達によるテロが研究施設を襲う。テコは罠を抜け出した零に目をつけ、零を利用することで事態の収束を計画するが……。
複数キャラの視点で描かれるノベルゲーム
テコルートは、複数の人物の異なる視点で展開するノベル内の選択肢によって、他の人物の物語が変化していくゲームシステムで進行します。
例えば、伊音テコ視点で「主人公と連絡を取りたい状況」が発生する→主人公がインカムを付けていないので連絡できずにバッドエンド→主人公視点に戻ってインカムを入手できる状況に進む選択肢を選ぶと、テコ視点で主人公に連絡が可能になり、別ルートが開放される……といった流れで、それぞれの人物での選択が影響します。
シナリオの傾向
ライターの発想を反映させやすい「テキスト主体のゲーム」ということもあってか、テコルートは他のルートよりも壮大かつ緻密な物語が描かれており、非常にクオリティが高いものでした。
人物に対してもより深く描かれていて、筆者個人はこのルートが一番のお気に入りです。
黒四館仄ルート(恋愛アドベンチャー(?))
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言葉と情報を巧みに操る謎多き女性幹部。次期教祖の座を密かに狙っている。
どう見ても怪しい。
あらすじ
黒四館仄が管轄する文科省を訪れた零は、黒四館仄が自ら招く形でとあっさりと面会に漕ぎ着ける。仄は恋愛感情による狂気で自身が灼かれる事を望んでおり、零に一目惚れしてその相手役をしてほしいと言い出す。
困惑する零だったが、仄に一服盛られて意識が遠のいていく。薄れゆく意識の中、仄に「12時間以内に解毒しないと死ぬ」ことを告げられ、解毒したいなら「学園を舞台にした恋愛でわたしを見つけて口説き落として」と訳のわからない要求をされる。
かくして、イケメン転校生(女)として終天学園に入り込んだ零と、3人の黒四館を名乗る美少女達との学園ラブが幕を開けるのであった。
学園を舞台にした三股恋愛アドベンチャー
1日毎に異なるヒロインを攻略していく恋愛アドベンチャー。会話中の選択肢で好感度が変化し、1日の最後の告白パートを成功させることでヒロインを口説き落とせます。
2日目以降は別のヒロインと交流していくことになりますが、当然ながら初日で告白してOKをもらったヒロインも健在という状況。つまり、既にOKをもらったヒロインのご機嫌をとりつつバレないように二股、三股を目指していくのがこのルートの醍醐味(?)です。
尖り散らしたヒロイン達
黒四館美衣
冷静沈着な美女……に見えるが、思い込みが激しく、薄い本で知り得たようなワードが口をついて飛び出してくる変人。
美衣は詩の発表を控えていて、零はアドバイスを送りながら彼女を口説き落とす突破口を探していく。
黒四館菊花
明朗快活なギター少女。感情の起伏が激しい。人前で演奏するとミスを連発するという悩みに寄り添う事で、関係を深めていく。
黒四館結愛
おっとり系×不思議ちゃん。両手に装着した人形を介した劇で話してくる。トーストをくわえた美少女とぶつかって遭遇というコテコテな出会い方をする。何やら秘宝を探しているようで、一緒に秘宝を探す中で距離を縮めていく。
シナリオの傾向
他のルートと比較してコメディの色合いが強いシナリオです。
ヒロイン達の反応もさることながら、心にも無い愛の告白をしながら浮気を積み重ねていくことへの良心の呵責に苦しむ主人公の姿が必見。
伏蝶まんじ(ステルスアクションホラー)
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気性が荒く、口より先に手が出るタイプ。異教徒への敵対心が強い。
幹部の中ではぶっちぎりの武闘派で、戦闘能力が高い。
物理的に怪しい。
あらすじ
伏蝶まんじへの接近を試みた零は、連続猟奇殺人事件に巻き込まれる。殺人鬼「ネフィリム」に追われながら、零は伏蝶まんじと協力して事件の解決に挑んでいく。
見下ろし型のステルスアクションホラー
伏蝶まんじルートは、見下ろし視点での3Dステルスアクションホラーで進行します。零を追う殺人鬼ネフィリムから身を隠しつつ、フィールド内の仕掛けを解きながら進路を切り拓いていくという流れ。
ステージは神社や廃工場といったホラーのお約束的なロケーションが多く、例えば神社ステージなら鳥居を特定の順番で潜る……といった具合に、その場所にちなんだギミックが用意されています。
ホラーではあるもののジャンプスケア要素はなく、ステルスの難易度も別段高くないため、「ステルスもホラーも苦手なんだけど!」というプレイヤーでも十分クリア可能です。
シナリオの傾向
ゲーム体験の大部分がホラーステルスにあるルートなので、他ルートと比較してこのルートそのもののシナリオは若干薄味気味ではあるが、メインシナリオの核心に迫る情報をいくつも得られるルートでもあります。
そのため、全体像を早めに把握したいなら最初に選択、小出しに情報を獲得していきたいなら後回しにするのがおすすめだ。
ドライな世界観で輝く「熱さ」と「希望」
本作では、「殺人事件の犯人は誰なのか?」というミステリーとして大きな謎を中心に据えつつ、「終焉とは何なのか?」「教団はなぜ終焉を待ち望んでいるのか?」「主人公はなぜ教祖になったのか?」「神の力とは一体?」といった、様々な謎がプレイヤーを待ち受けています。
バラバラになった教祖の身体のように散りばめられたそれらの謎は、少しずつ明らかになり、物語全体の真相へと帰結していきます。その過程とスリル、そして真相が明らかになっていく際の極上のカタルシスは、さすがの一言。
しかし、エンディングを見終えた上で、筆者が本作で最も推したいと感じたのは、謎解きという枠を超えた物語そのもののクオリティでした。
本作のビジュアルは徹底してポップな一方で、世界観と設定に倫理的なズラしが随所に見られるため、当初は「クール」「スタイリッシュ」「冷笑的」という印象を受けました。が、本作で描かれるシナリオは、冷笑、シニカル、逆張りといった類のものではなく、愚直なまでの「熱さ」と「希望」に満ちたものです。
ダンロンスタッフらしく尖ったデザインと世界観は、ややもすると「とっつきにくさ」を感じるかもしれませんが、クリアする頃には多くのキャラに愛着が湧き、本作の世界そのものに対する愛おしさすら感じたほど。
クリアに必要な時間は、アドベンチャーゲームとしてはかなり長めです。しかし、本作の物語を全て終えた時、その長いプレイ時間に十分過ぎるほど見合った、充実した旅愁に近い感覚を得られました。
小高氏のファンであってもそうでもなくても、ぜひこの残酷で熱くて美しい物語の「終焉」を、体験してみてください。