下落する市場に現れる仮想通貨クジラ、その狙いと相場への影響を分析

下落する市場に現れる仮想通貨クジラ、その狙いと相場への影響を分析

暗号資産(仮想通貨)の市場には、時折「クジラ(Whales)」が出現します。もちろんこれは通称であり、実際には1度に多額の取引を行う特定の大口投資家のことを指しています。

クジラは主に相場が下落しているタイミングに現れ、多額の取引で市場に影響を与え、場合によっては主要通貨の価格を左右することもあります。

今回も直近の価格下落の陰に、クジラの姿が見え隠れしています。その動向をオンチェーンデータ分析企業クリプトクワント(CryptoQuant)のレポートから追ってみましょう。

イーサリアムのマージを狙ったクジラの動き

イーサリアム

イーサリアム(ETH:Ethereum)は9月15日に、予定通りマージ(Merge)を完了しました。市場の動向を予測する指標の1つに「資金調達率(funding rate)」がありますが、これは先物取引のトレーダー間で売買されるイーサリアムの、定期的な手数料の割合を示したものです。

この指標がプラスの場合、ロングのトレーダーはショートのトレーダーに手数料を支払います。通常は強気の市場心理でこの傾向が強まります。一方で指標がマイナスになると、ショートがロングに手数料を支払います。これは弱気の市場心理を表しています。

資金調達率はここ数日で急激な下落を始め、マージ実装の時点では過去最低レベルにまで到達しました。アナリストたちは、トレーダーがすでにマージの影響を予測し、ショート(売り)のポジションに動いたため、イーサリアムの価格は下落に向かうだろうと分析しました。しかし予想に反して価格は下落せず、ショートのトレーダーがポジションを閉じたことで、資金調達率は急上昇しました。

市場にクジラが現れたのはこの時です。彼らはマージ直後のタイミングで市場に多量のイーサリアムを放出。その結果価格は大幅な下落を始めました。これはクジラの常套手段で、価格を操作した上で再度売買を行い、多額の利益を手に入れるという彼ら独自の戦略です。

クジラの次の狙いはビットコイン

クジラの次の狙いはビットコイン

ビットコイン(BTC:Bitcoin)価格は8月にやや盛り返し、その流れは9月になっても継続していました。ところが20,000ドル(約286万円)のサポートラインを下回るタイミングで、ビットコイン市場でもクジラの動きが活発化します。

8月11日のクリプトクワントによるリサーチでは、それまで7年間も休眠状態にあったビットコインが、1,000~10,000BTCという大口で取引されたことが分かりました。これらの資産は初期のビットコイン保有者のものか、今では閉鎖された取引所クリプツィー(Cryptsy)がハッキングされる前に、そこから引き出されたものであると分析されています。

こうした資産は一度無名のアドレスに送金され、そこでほかの資産と周到にミックスされ、取引所を通して安値で売られます。このクジラによる大口取引は、大量のビットコインが一度に入金されて、ビットコイン為替準備金(相場安定のための備蓄資産)が大きく跳ね上がることで明らかになりました。

さらに9月7日には、10日間のうちに15,000BTCを超える額が、取引所クラーケン(Kraken)に送金されました。これらの資産は、8年以上も休眠状態にあったものです。こうしたクジラの動きは市場にさらなる売り圧力を加え、弱気市場をさらに悪化させました。

マイナーにも広がる波紋

マイニングそのものをコストダウンするために

市場の売り圧力に屈して、マイナーによるビットコインの放出も続いています。北京をベースにしたプーリン(Poolin)というマイニングプールからは、5,000BTCが引き出されました。そのため現在は、一時的に出金を停止しています。

マイナーにとってはビットコインの価格が下がり、ハッシュ価格も低下すると収入も減少します。こうした負の連鎖が波紋を広げ、さらに多くのクジラやマイナーにも売り圧力を加えます。

結果的にビットコイン為替準備金は、6月に4年ぶりの低値を付けてから、8月末以来急激に上昇しています。また取引所のビットコイン総保有量も継続的に増加しており、さらに売り圧力が強まることになりそうです。

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