ビットコインを強力にサポート！レイヤー2プロトコル「Ark(アーク)」とは？

BRC-20やOrdinalsなど、Bitcoin(BTC：ビットコイン)の新たな可能性が広がる中で、2023年5月18～20日にマイアミで行われたBitcoinの年次会議では、ユーザーインターフェースの問題を改善する、新レイヤー2プロトコル「Ark(アーク)」が話題になりました。

※1ドル＝140.0円で換算

Bitcoinの最新レイヤー2プロトコル

Arkは同じくレイヤー2のLightning Network(ライトニング・ネットワーク)との共通点が多いものの、独自に開発されたレイヤー2プロトコルです。開発者のブラーク(Burak)氏は、Lightning Networkの問題点を解決する研究を続ける中で、Arkのアイデアを思いつきました。

Arkの特長としては、高速決済処理の実現とスケーラビリティの改善、さらにユーザー・プライバシーの強化が挙げられます。さらに、Lightning Networkよりもブロック・スペースを節約でき、オンチェーンの手数料による影響も受けません。

決済処理もLightning Networkとは異なり、決済チャネルの開設、閉鎖、資金準備、流動性の調整などの処理が不要です。支払いを受け取る側も同様に、複雑な手続きは必要ありません。

これらの機能を可能にするのは、Lightning Networkのノードにあたる、Ark Service Provider(ASP：アーク・サービス・プロバイダー)です。ASPは第三者による信用が不要な媒体で、常にネットワークに接続され、流動性と容易なペギングを提供します。

ユーザーがオンチェーンのBitcoinをASPに預金すると、その資金は特別な2/2のマルチシグBitcoinアドレスに送られ、Virtual Transaction Outpits(vTXOs：バーチャル・トランザクション・アウトプット)が生成されます。

このvTXOsは、メインチェーンからArkのレイヤー2に送られます。ユーザーが引き出しを行う場合は、vTXOsが再びメインチェーンでBitcoinに換金される仕組みです。

高速Coinjoinを使った決済処理

Arkの優れた点は、プライバシー機能の強化にも表れています。ユーザーが資産を送金したり受け取ったりする時には、ASPが仲介役となって、すべてのトランザクションはArkの高速Coinjoinで送られます。

ユーザーはCoinjoinの前に、「コイン・コントロール」を使って、どのvTXOsを利用するか決めることができます。

Arkは流動性の制限や、送り手と受け手との直接リンクを必要とせずに、よりプライバシーを高めた決済処理を実現します。しかも複雑な処理はASPに任せればよいので、ユーザーは特別な知識なしでも簡単にArkの利用が可能です。

Coinjoin(コインジョイン)とは

複数のユーザーの取引を1つのトランザクションにまとめることで、送金経路を分かりにくくさせ、プライバシー強化を図る技術です。Samourai wallet(サムライウォレット)やWabiSabi wallet(ワビサビウォレット)のCoinjoinがよく知られています。

Arkの課題と今後の展開

Bitcoinに多くのメリットをもたらすArkですが、解決すべき課題が現在2つ残っています。その1つは、具体的な用途が決まっていないことです。

開発者のBurak氏は独自のアイデアに沿ってArkを設計しましたが、確かなコンセプトや実装するべきターゲットは決まっていません。今後はBitcoinコミュニティの協力もあるでしょうが、解決にはまだ時間がかかると思われます。

もう1つの課題は、現在のArkの設計では、BIP 119(Bitcoin改善提案コード119)によるサポートが必要になることです。しかもBIP 119で機能を追加するためには、ソフトフォークを実行しなければなりません。

Bitcoinのプロトコルを変更してソフトフォークを行うことは、過去の事例から見ても極めて困難なのです。

しかしArkには、Lightning Networkでも改善できなかった問題を解決できる可能性があります。ユーザーにとっても選択肢が増えるのは歓迎すべきことであり、今後もArkの開発のゆくえを見守る必要があるでしょう。