Web3をリードするIT大国インド、急成長する市場と潜在能力をレポート

インドの主要IT企業が加盟する業界団体のNASSCOM(ナスコム)は、インド国内におけるデジタル資産の運用状況と、今後急速に広がることが予想されるWeb3市場について、独自に調査したレポートを発表しました。

インドのWeb3をけん引するNASSCOM

NASSCOM(National Association of Software and Services Companies：全国ソフトウェア・サービス企業協会)とは、1988年にムンバイで設立された業界団体で、現在インドの主要IT企業約1,200社が加盟しており、資産総額は2,270億ドル(約33兆8,000億円)と見積もられています。

今回発表されたレポートで、NASSCOMはWeb3市場におけるインドのポテンシャルを、以下のように3つ挙げています。

NASSCOMが発表したWeb3の展望

10月19日にインド南部のベンガルールで発表されたレポートは、NASSCOMとWeb3ベンチャー・キャピタルのHashed Emergent(ハッシュド・エマージェント)が共同で作成し、「インドのWeb3スタートアップの将来展望」と題されています。

レポートでは、インドのスタートアップが急成長を遂げていることの一例として、国内のスタートアップ数が450社を超えていることと、そのうち4社は評価額が10億ドル(約1,489億円)を超える、いわゆる「ユニコーン」であることを挙げています。

ただし、全体の60%はインド国外で登記された企業であり、少なくとも30%は2021年に設立された企業です。しかし、その多くがDeFi、NFT、ゲームなどの多彩なプロジェクトを進めており、特にDeFi分野では2021年だけで、およそ880億ドル(約13兆1,000億円)相当の資産がチェーン上で動いています。

この点についてレポートには、「インドでの最新テクノロジーの採用と、成長著しいスタートアップのエコシステム、そしてデジタル・スキルを有する人材の巨大な潜在能力があれば、世界のWeb3市場でインドがその地位を固めることは十分に可能である」という自信に満ちたコメントが載せられています。

年間120%程度の急速な成長を見せると推測

レポートでは、Web3とブロックチェーンを支える国内の人材プールは、世界市場の約11%と試算されており、現在でも世界で第三位の規模ですが、今後も年間120%程度の急速な成長を見せると推測されています。

世界に目を向けると、暗号資産とWeb3関連企業への投資額は2021年で305億ドル(約4兆5,400億円)にのぼり、ユーザー総数は現在の3億2,000万人から、2030年までには10億人に達すると予測されています。

残された課題とは？

Web3エコシステムに対する政策的枠組みの欠如

NASSCOMのレポートでは、今後解決すべき課題についても述べられています。その最大のポイントは、成長するWeb3エコシステムに対する政策的枠組みの欠如であり、このままにしておくと暗号資産とWeb3分野の伸展を支えきれなくなる可能性を指摘しています。

一方でインド政府の政策では、ブロックチェーン・テクノロジーは支持するものの、暗号資産に関しては明らかではないということです。

さらに、暗号資産とWeb3分野における政策透明性の欠如は、新たな事業の創設や事業刷新に対する人々の自信を失わせる可能性があります。その結果彼らが国外に拠点を移したりすれば、市場を失うのみならず、重要な人材や専門技術まで失ってしまうかもしれません。

多様なユースケースに規制を設けることを提案

NASSCOMは、まずブロックチェーンを利用・運営する上での多様なユースケースに規制を設けることを提案しています。この規制はリスクベースであることも重要です。

そしてWeb3スタートアップ、政策専門家、投資家、大手企業、政府関係者などが集まり、インドのWeb3の成長について建設的な議論をすることが何より重要だとして、NASSCOMは今回のレポートを締めくくっています。