FTXの破綻が招く仮想通貨業界の大混乱、ハッキングや多額の損失が次々に

暗号資産（仮想通貨）業界を震撼させたFTX騒動は、最終的に経営立て直しの目途が立たず、11月11日にFTXトレーディングは破産を申請しました。負債総額は最大で日本円にして7兆円に上る見通しで、仮想通貨史上最大の破綻になると見られています。

しかし事態はこれで沈静化したわけではなく、ほとんどの仮想通貨が大幅な値下げを記録すると同時に、FTXの余波があちこちに広がっています。その混乱した業界の現状をレポートします。

※1ドル＝139.7円で換算しています。

FTXの破綻とハッキング事件

不正アクセスがあったことを発表

12日になってFTXは、同社が保有する一部の資産に対して不正なアクセスがあったことを公表し、さらに破産申請直後に約4億8,000万ドル（約670億5,600万円）がハッキングの被害に遭い、同社のウォレットから流出したことを認めました。

ブロックチェーン・セキュリティ分析企業のPeckShield（ペックシールド）が公開したデータによれば、FTXからは12日以降におよそ6億ドル（約838億2,000万円）が出金されており、そのうちの約4億8,000万ドルがハッキングされたと見られています。

ハッカーは資産を移動して多額のETHを得る

さらにハッカーは、15日になってその資金を移動し始めました。まずハッカーは資産をステーブルコインのDAIコイン4,800万ドル（約67億600万円）に交換し、それを37,000ETH（イーサリアム）に交換、現在そのアドレスには288,000ETHが保有されており、仮想通貨界全体で35番目の高額保有者になっています。

ただし、現在多くのブロックチェーン分析企業が独自のデータを公表しているため、実際にハッキングで流出した資産の正確な額については、複数の意見があるようです。

大損失を被ったソラナ財団

7億ドル以上の資産価値を失う

Solana（ソラナ財団）も、FTXの破綻に絡んで多額の損失を被っています。FTXの問題発覚以来、SolanaのDeFiアプリケーションは、Solanaトークン（SOL）の価格下落により7億ドル（約978億円）以上の資産価値を失いました。

FTX問題でSolanaは縮小+暴落

2021年11月に、SolanaのDeFiアプリケーションは100億ドル（約1兆4,000億円）にまで成長しましたが、この時期にFTXの創設者でAlameda Research（アラメダ・リサーチ）のCEO（最高経営責任者）Sam Bankman-Fried（サム・バンクマン・フリード）氏が、Solanaの熱烈な支持者に名を連ねていたのです。

ところが仮想通貨業界の急激な収縮により、2022年11月になると、SolanaのDeFiは10分の1の10億ドル（約1,400億円）にまで縮小、さらに今回のFTX問題で3億ドル（約419億円）にまで縮んでしまいました。その上Solanaトークンは、FTX問題のあおりを受けて50%以上も暴落しています。

Solana財団は経営自体に影響はないとコメント

こうした状況に対してSolana財団は、FTX崩壊の影響は限定的であり、FTX取引所に資金を預けているという事実もないため、経営自体に影響はないというコメントを発表しています。

今後FTXが辿る道は？

FTXには100万人以上の負債者がいる

FTXがなぜ突然破綻することになったのか、それを説明する手助けになる裁判所文書によると、FTXにはおよそ100万人以上の債権者がいるようです。

さらに今回の破産処理では、各支所や部門を別々に取り扱うのではなく、グループ全体で取り扱うように申し立てをしているとのことです。

債権回収を一時停止し経営再建を図る

FTXには米連邦破産法11条が適用されますが、これは日本の民事再生法に該当し、今後は経営再建を前提に手続きを進めることになります。まずは債権回収が一時停止され、FTXは事業を継続しながら経営再建を図ると見られます。

日本国内では15日に、金融担当大臣が記者会見で、FTX日本法人の利用者の資産については、適切に保護されているという見解を示しました。今後は顧客の資産返還に向けた協議が進められるという見通しについても述べています。

前途はかなり厳しいのではないか

ただし、FTXの破綻により仮想通貨全体が値を下げており、FTT（FTXトークン）はほとんど価値を失っています。FTXトレーディングが再スタートを切るにしても、前途はかなり厳しいものになるでしょう。