実行が迫るETH上海アップグレード!ユーザーへの影響とリスクを検証
Ethereum(ETH:イーサリアム)は2022年9月の大型アップグレードMerge(マージ)により、PoWからPoSへと生まれ変わりました。そして今回予定されているShanghai(上海)アップグレードにより、EIP-4895が実装されるとともに、ステーキングされたETHの引き出しが可能になります。
目前に迫った次の大型アップグレードに関して、暗号資産(仮想通貨)取引所BITFINEX(ビットフィネックス)のレポートを紹介します。
※1ドル=131.9円で換算
上海アップグレード直前の最終テスト
上海アップグレード実行前のテストでは、現在テストネット「Zhejiang(浙江:せっこう)」でのテストが完了しています。今後「Sepolia(セポリア)」「Goerli(ゴエリ)」という2つのテストネットが成功すれば、上海アップグレードが実行される予定です。
テストネットでは、開発者と一部ユーザーも参加して、主に引き出し処理が確認されているようですが、今のところ大きな問題は起きていません。現状では予定通り、2023年3月にアップグレードが完了するでしょう。
ETH価格への影響は?
アナリストの一部は、上海が完了するとETHの引き出しが集中し、ETHの価格に大きな売り圧力がかかると見ています。
一方では、資金が移動できるようになればリスクが下がり、ステーキングがさらに増えると予測するアナリストもいます。今のところ上海によってETH価格がどう動くのかは、「やってみないと分からない」という状況と言えるでしょう。
2種類の引き出しオプション
Mergeでは実装されなかったETHの引き出しが、上海アップグレードにより可能になります。その引き出し方法は大きく次の2つに分けられます。
1.一部引き出し(partial withdrawal)
ステーキングによる報酬だけを引き出し、元金となる32ETHはそのままステーキングを継続するオプション。現在のステーキング報酬は、年換算利率で約4.29%です。
2.完全引き出し(full withdrawal)
ネットワークからビーコンチェーンを切り離し、バリデータを削除することで元金の32ETHと、ステーキング報酬のすべてを一括して引き出すオプションです。
引き出しが可能になった場合に考えられる問題は、処理が集中することによる遅延です。引き出しの受け付けは12秒ごとに行われ、1回に対応できるのは16件までです。そのため同時に多数の引き出しが集中すると、処理に遅れが出る可能性があります。
ただし、ステーキングのユーザーが全員引き出しを行うことは考えられず、しかも同じタイミングで引き出しを行う可能性も低いため、実際には処理の集中による遅延は避けられると見られています。
ユーザーへの影響とリスクは?
上海アップグレードが完了した後、ユーザーが希望するタイミングでスムーズに引き出しができるかが、現在最も注目されているポイントです。また、報酬として手に入れたETHを引き出す動きが加速すると、一時的にETHのスポット価格が下がる可能性も指摘されています。
現在32ETHに満たない少額ユーザーは、ステーキングプールを利用してステーキングに参加しています。この仕組みでは複数のユーザーが共同でステーキングを行い、少額の手数料を支払うことで報酬を手に入れます。
このEthereumのステーキングプールは、いわゆるリキッドステーキング・モデルとして機能します。リキッドステーキングでは、預け入れたETHがロックされていても、その額に応じたトークンを発行してもらい、それをDeFiなどで活用できます。
つまりリキッドステーキング・トークンは、デリバティブとして機能するわけですが、上海アップグレードによって、この機能に影響が及ぶ可能性があります。
今回のアップグレードが市場に与える影響の中では、流動性の増大が最も危惧されています。現在多くの企業や組織はETHのステーキングを見送っていますが、引き出しが可能になることにより、これらがステーキングに参加して巨額の資金が流入する可能性があるのです。
多くの投資ファンド、DAO(分散型自律組織)、仮想通貨取引所などがステーキングに参入すると、市場の流動性が高まり、セキュリティのリスクも高まるかもしれません。Ethereumにとっては、今後の発展に向けた重大な転機になると言えるでしょう。
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