仮想通貨取り引きの安全性向上へ！Coinbaseが資産リカバリーツールを公開

暗号資産(仮想通貨)業界では、大手取引所の破綻や資産の流出問題などが続き、多くのユーザーが先行きに不安を感じています。各仮想通貨取引所は、独自の安全性向上対策を実施しており、Coinbase(コインベース)はユーザーの送金ミスに対処するツールを公開しました。

※1ドル＝139.4円で換算

送金ミスの問題

銀行振り込みと同様に、仮想通貨取り引きでも送金ミスは起こります。Coinbaseのアドレスにも、間違ってサポート対象外のトークンが送金されることがありました。この場合Coinbaseの台帳に記載されることはなく、送金者が資産を取り戻すことも事実上不可能でした。

送金ミスが分かっても、送金者のプライベートキーが確定できないことには、払い戻し処理ができないからです。

送金者にとって、自分の資産がどこに送られたのかも分からず、取り戻すこともできないことは、仮想通貨ネットワークへの信頼低下につながります。そこでWeb3環境で安心して取り引きが可能になるように、Coinbaseは資産リカバリーツールを開発しました。

誤送金回復に必要なユーザー情報

Coinbaseが開発したのは、「ERC-20 self-servise asset recovery tool」と命名された資産リカバリーツールです。

このツールは、Coinbaseに誤送金されたトークンがEthereum(イーサリアム)のERC-20に準拠していれば、およそ4,000種類をカバーして送金を払い戻すことができます。今後数週間以内に、ユーザーはリカバリーツールにアクセスできるようになります。

誤送金の回復に必要な3つのユーザー情報が確定できれば、わずか数回クリックするだけで、Coinbase内もしくはセルフ・カストディのウォレットに誤送金された資産を回復することができます。

この時に、ユーザーのプライベートキー情報が外部に漏れる心配は一切ありません。独自に開発された特許技術により、Coinbaseの取り引きシステムを介すことなく、極めて安全に資産を払い戻すことが可能です。

Coinbaseが対応するのは、EthereumベースのレイヤーにあるほとんどのERC-20トークンですが、完全にすべてのERC-20をカバーするわけではなく、カバーするトークンが変更される可能性もあります。

今後はサポート対象になる資産を調査して拡張する予定ですが、技術的な問題から、どの資産を対象にするかを事前に確定することはできません。

また、対象になる資産はCoinbaseによる厳格な資産検証プロセスの手続きを経ることがないため、ユーザーは自身で回復する資産の信頼性と安全性を検証することになります。回復する資産に対する責任は、ユーザー自身が負うわけです。

今回Coinbaseが公開したリカバリーツールは、ユーザーの安全性の面でも、カバーするスケールの面でも仮想通貨業界では前例のない取り組みです。さらに、リカバリー手数料の負担が小さいことも、もう1つの大きなメリットになるでしょう。

Coinbase以外の取引所でも同様の仕組みはありますが、通常は15%程度のリカバリー手数料を請求されます。しかしCoinbaseのシステムでは、払い戻しトークンが100ドル(約13,600円)未満の価値であれば手数料は発生しません。

100ドルを超えると5%の手数料が発生しますが、これはシステムの改善費用とメンテナンス費用に充当されます。ただし、通常の取り引きのようにネットワーク使用料は掛かります。

また、Coinbase以外の取引所の場合、払い戻し処理はカスタマーサービスに依頼して、マニュアル作業で進められますが、Coinbaseの資産リカバリーツールなら、ユーザー自身が非常に簡単な手続きで資産を回復できます。

1点だけ注意が必要なのは、このサービスがまだ日本では利用できないことです。しかし近いうちにアップグレードして、日本でも対応可能になるでしょう。