イーサリアムのアップデート「Shanghai(シャンハイ)」が2023年3月に予定
2022年9月15日に完了した、Ethereum(イーサリアム)の大型アップグレード「The Merge(マージ)」に続いて、2023年3月には次のアップグレード「Shanghai(シャンハイ)」が控えています。
Shanghaiでは、これまでロックアップされていたEthereumが引き出し可能になる予定ですが、大規模な価格変動を引き起こす、または市場のバランスを崩すという可能性はないのでしょうか。
※1ドル=131.9円で換算
大型アップグレードThe Mergeのポイント
前回のThe Mergeでは、コンセンサス・アルゴリズムがプルーフ・オブ・ワーク(PoW)から、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)へと大転換されました。
この変更で、Ethereumが抱えていたスケーラビリティの問題と、エネルギー消費の問題が大幅に改善されましたが、いくつかの課題は次のアップグレードに先送りとなりました。
次期アップグレードShanghaiの概要
Shanghaiアップグレードでは、The Mergeで見送られたEthereumトークン(ETH)のロックアップ解除、つまりステーキングされたETHの引き出しが可能になります。公式テストは、2月下旬と見込まれており、正式なアップグレードが実行されるのは3月になる予定です。
The MergeによりPoSに転換したEthereumでは、ETHを一定期間ステーキングしてロックアップすることにより、ユーザーはバリデータとなり、ネットワークの運用に参加できるようになりました。同時にその対価として報酬を得ることもできます。
結果的にマイニングが不要になり、システム全体でのエネルギー消費量を99%も節減できたと言われています。
しかしThe Mergeでは、一度ロックアップされたETHの引き出しまではサポートされませんでした。それが今回のShanghaiで可能になるわけですが、暗号資産(仮想通貨)業界では、市場に大きな影響を与える可能性を懸念する声が聞かれます。
売り圧力増加のリスク
現在Ethereumのデポジット・コントラクトには、およそ1,600万ETH、約210億ドル(約2兆7,700億円)が預け入れられており、これはETH総供給量の約13%に当たります。この中にはステーキングに参加しているユーザーへの報酬も含まれています。
Shanghaiでこれらの資産が引き出し可能になれば、さらに多くのEthereumユーザーがPoSに参加する可能性があります。一方では、多額のETHが引き出されることで、市場での売り圧力が増加するリスクも危惧されるため、ETHの価格下落を引き起こすことになるでしょう。
売り圧力回避のシナリオ
数年間ETHをステーキングしているユーザーは、その報酬に加えてETHの値上がり分からも利益を得ようとするでしょう。ここで重大な要素になるのが、現在のETH価格です。
現時点でETHの価格は、およそ1,400ドル(約18万4,700円)で推移しています。一方で5,000ETH未満をステーキングしたユーザーの、平均的な預け入れ価格は現在の価格を上回っています。
ある分析によると、その平均価格は2,260ドル(約29万8,000円)と試算され、現在の価格よりも800ドル以上高いということです。この状況でせっかくの利益を捨ててまで、急いで引き出しをするユーザーがいるかどうかは疑問です。
損失覚悟でETHを引き出して売りに出す投資家がいないとは言えませんが、実行するケースはかなり少ないでしょう。また、多額・多数の引き出しが、一度に集中する可能性も低いと言えます。業界の予測では、ユーザーは長期的に少しずつ引き出しを行うと見られています。
これらの要素を検証すれば、Shanghaiのアップグレードにより、市場に大量のETHが放出され、売り圧力の高まりが価格の暴落を引き起こすというシナリオは、おそらく回避できそうです。
一方で、Ethereumの機能性をさらに高めるための「EOF(EVM Object Format:イーサリアム仮想マシン・オブジェクトフォーマット)」は、今回のShanghaiアップグレードでは見送られ、次回のアップグレードに持ち越しになりそうです。
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