相次ぐ買収や提携！仮想通貨業界で進む基盤強化の動きをレポート

現在暗号資産(仮想通貨)業界では、業界再編の動きと同時に、ほかの業界との提携や買収の動きも加速しています。その例として、Coinbase(コインベース)とVeChain(ヴィチェーン)をめぐる2つの流れをレポートします。

※1ドル＝135.8円で換算

Coinbaseが米ヘッジファンドを買収

仮想通貨

現在業界第2位の仮想通貨取引所Coinbaseは、3月3日にアメリカのデジタル資産ヘッジファンドである、One River Digital Asset Manegement(ORDAM：ワン・リバー・デジタル・アセット・マネジメント)社を買収したと発表しました。

Coinbaseの機関投資家による取引額は、4半期で1,300億ドル(約17兆6,500億円)に達しており、ヘッジファンド、一般企業、金融機関などを含む世界中のさまざまな機関が、仮想通貨エコシステムのプラットフォームとしてCoinbaseを利用しています。

2022年の第4四半期には、世界のトップ100にランクするヘッジファンドの約25%が、Coinbaseのネットワークを活用したと報告されています。

一方のORDAMは、主に機関投資家向けのサービスを展開しており、米証券取引委員会(SEC)にも登録されている投資関連企業です。親会社はOne River Asset Manegementであり、現在デジタル資産投資分野で世界をリードしています。

CoinbaseとORDAMとは、両社は共同でCoinbase PrimeとCoinbase Custodyをベースに、デジタル投資戦略とインデックスのプラットフォームである「ONE Digital SMA」を構築。またCoinbaseは早い段階でORDAMの出資者にもなっています。

今回の買収によりCoinbaseは、現在の仮想通貨市場の動揺から脱するために、まずはORDAMの協力のもとリスク・マネジメントの強化を進める狙いのようです。

さらにORDAMの洗練されたスタッフを受け入れ、投資の安全性と安定性をアピールすることで、ORDAMの既存クライアントも含めて、新たな機関投資家を仮想通貨市場に取り込む戦略を実行するでしょう。

今後ORDAMはCoinbaseの完全子会社になりますが、1つの独立した企業として、仮想通貨取り引き業務からは分離した状態で経営を続けます。

CEO(最高経営責任者)兼CIO(最高情報責任者)には、現状のままエリック・ピーターズ(Eric Peters)氏が残留します。またORDAMのスタッフもそのまま残留します。

VeChainはシンガポールに拠点を置くVeChain財団が運営するプロジェクトであり、主に物流に関連するブロックチェーンを開発し、独自の仮想通貨VeChain(VET)も発行しています。

そのVeChainが3月5日、アメリカの大手マネジメント・コンサルティング企業の1つであるBoston Consultant Group(BCG：ボストン・コンサルティング・グループ)と提携したと発表しました。

BCGは100を超える国々に拠点を置き、従業員数は25,000人以上、年間収入がおよそ110億ドル(約1兆4,900億円)に及ぶ世界第2位のコンサルティング企業です。

現在、世界中のサプライチェーンからの有害な排出物は、地球全体での排出量の50%を占めると言われています。今回の提携により、ブロックチェーン技術を活用することで、その排出物を80%削減することが可能になると言います。

VeChainとBCGは、VeChain主催でラスベガスにおいて行われた、Web3と持続可能な社会に関するイベントで今回の提携を発表しました。

その席でVeChainは、新たなウェブサイトとホワイトペーパーもローンチしています。さらに、VeChainはナノ技術の炭素繊維「グラフェン」とスマート・コントラクトを活用して、Web3ベースのカーボン・マーケット(炭素市場)に参入することも明らかにしました。

具体的には、VeChainのスマート・コントラクトを使って、カーボン吸収とトークン発行を連動させ、次世代のカーボン・マーケットを創出する狙いのようです。

このように、2022年からの市場の混乱を契機に、仮想通貨業界では各方面で新たな動きが生まれています。今後も幅広い分野の企業が手を結び、予想外の展開を見せるかもしれません。