【ヴァルコネ】魔法賢者イプサムに渡したい
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質問内容
- QW
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ただいま戻ったぞ
森の奥深くを流れる清流のように澄んだ声が聞こえてきた。マスターが帰ってきたのだ
いい子にしていたか?お主の顔が見られて、私も漸くひと心地つける
ほっと一息し、指先でやさしくあなたの頬を撫でるイプサム。相変わらずひんやりした細指だが、あなたに触れてほほ笑む彼女はひどく疲れているように見えた
なに、少し世界を救ってきただけだ。あの異世界の魔力を取り込んだ魔女には少々傷つけられたがな
よく彼女をみると、その魔力によって色褪せることのないという、藍青色の美麗なフードの輝きが明らかに弱まっていた。先日オーディンに非常の召集をかけられ、めんどくさい行きたくないとぶつぶつ文句を言いながらも渋々召集に応じたマスター。あの時無理にでもお供すべきだったのか
- 2019/2/15 | 通報
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追記
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たしかにお主はルーンを得手としているし、私も、常日頃世話になってはいる、とこほんと一呼吸入れるイプサム
だがお主は人間なのだ、ちょっと丈夫なだけのな。人間は数は多いがお主のような者はそうは居まい?そんなルーンの操り手を私以上に扱える者もおらぬであろう?あくまで有効利用できるからお主を失いたくないだけのこと
よいな?と何故かじろりと睨まれ、フードを被りなおし早足で自室へと向かう彼女。しかしふと立ち止まり
出迎えてくれたこと、礼を言うぞ、と雨水が緩やかに染みこんでいくような声であなたをいたわった
それだけ残して再び歩き出す青色の背中を見送りながら、あなたはゆらゆらと気持ちが波立つのを感じた。最近ではマスターと同種族であるエルフですら彼女に恐怖を抱いていると聞いたことがある。この森深くにある屋敷で人気を避けるように暮らす理由を彼女は話そうとしないが、この自分のルーンの力で、そうでなくても彼女の助けになりたい。そんな思いがあなたの中で波紋を帯びて広がるのだった
- 2019/2/15
一人が使用するにはあまりに広々とした寝室は、朝凪のようにしんとしており、彼女のふとんとナイトウェアの衣擦れの音だけが木霊して聞こえてくるようだった
…出かけたい?わたしの許可なく…ふぁ、それで起こしにきたのか
潜っていたベッドから顔だけ覗かせ、不機嫌そうにあなたのいる辺りを見やるイプサム。朝の光を反射して金色の髪がさらさらと宝石のように輝いている。まだ重いのだろうまぶたの際からは長い睫毛がのびており、その先端には、まるで露が下りたように丸い水滴がきらきらと彼女の瞳を縁取って見えた
…それで?お主のいる世界を救ってきて傷ついてへとへとで意気消沈な私を置いて、いったいお主は何処へ行こうというのかな?
マスターと一緒に出かけたいんです!!咄嗟にそう叫ぶと、ぴたり、といつの間にか迫っていた水流がその動きをとめた
私と、だと?ベッドから半身になったまま、ヴィゾフニルが水鉄砲くらったかのような表情を浮かべるイプサム。助かった…そう思いながら、あなたは話を続けた
…なるほどな。今はそのような時期であったな
一通り話を聞いていた彼女はんーっと大きく伸びをし、半眼をこすりながら魔力を治めた。あの奔流も霧散するかのごとく、気がつけば影も形も消え失せている
私を誰だと思っているのだ?今に残る…、となにか言いかけた口をつぐみ、あなたをじっと一瞥するイプサム。どうしたのかときょとんとしていると、ややあって
あぁそうですか、と苦笑いを浮かべながら少し緊張の和らいだあなたがベッド端にゆっくり腰かけると、シャボン玉のような泡がふわふわと辺りを漂っているのに気づいた
この前もある白魔法使いから手作りクッキーやケーキを頂戴したしな。綺麗好きなあやつだが、なかなかに奮闘しているようだな、あれは文句なく美味であった。もう一度食べてみたいものだがそれにしても…
いつになく饒舌なマスターに呼応するかのように、周りの水泡がくるくると彼女を中心に自転と公転をくり返している。大きな窓から差し込む光も相まって、まるで踊っているように楽しげに映って見えた
お主、私に甘えたいのか?そうなのであろう?この私から、チョコを受け取りたいと?
なにがそこまでおかしいのか、くすくすとこらえきれないといった風に口元を抑えて笑うイプサム。実に愉快、愉快とあんまり可笑しそうにしているので、一緒に街へ出かけましょうお願いします!と早口で遮るあなた
ならば話は早い支度するから部屋を出て行け、とあっという間に追い出された(流された)。世界を救った疲労はどこへやらと呆れつつ、今日を機に少しでも彼女の気分転換や癒しになればとあなたは思わずにはいられなかった。ゆえに敬愛するマスターの支度時間がどれほど長くなろうと、あなたは全く苦に思わなかったのだ
どんな種族であろうと、女性というのは色々と準備があるものなのだ。これからよく覚えておくのだな
予想以上の反応で大変おもしろい、が一目見ただけでこれとはな
では、お主と私のデートへ行こうではないか。ちゃんとエスコートしてくれるのであろうな?
ぎゅっ、と不意に彼女から手を握られた。冷たいけど、温かい。胸の鼓動を悟られぬよう、そっと彼女の手を握り返す。長い年月を渡る彼女にとって、あなたと過ごす日々はほんの束の間の出来事、泡沫の夢、気まぐれに近いのだろう。それでもいいとあなたは思った。わずかでも彼女と時間を重ねよう。彼女の心にいられるように、支えられるように。歩き出した二人のあとを、いくつものシャボン玉が追いかけていった……(甘い泡沫END)